1999年5月14日(金)
夕方からは、池袋コミュニティ・カレッジでの講座。最近の技の研究の最先端は、゛壁突゛からの展開。
いまは、本来、柔構造をしている人間が威力を出すとき、いかにしてアソビのないユルミのない剛を出せるか、ということと取り組んでいる。これは単に体を硬く固めても、それでは硬いボールとなって、よく弾むだけで、相手のなかに入ってゆけない。
そこで講座では、畳んだ提灯はショック吸収がない、バラして密着させたコイルバネは鉄パイプになる、の゛たとえ゛を使って術理を解説し、私よりも40sほど重いが武道経験も長く体もよく動くT氏と、体当りでぶつかりあってみた。
そして、ただ体を固めただけでは私の方が4mほど後ろにとばされたが、体を提灯畳みの状態にすると、当たった直後に逆にT氏を浮かせることが出来た。まだまだ不十分だが、今後も研究を進めてゆきたい。
最近は武術の方でも「ゆるめる」とか「脱力」「リラックス」ということをよく耳にする。もちろん、これはこれで意味もあるが、ただゆるめばいいというものではないことは明らか。
「ゆるむ」とか「しなやか」という言葉は耳に快いが、うねり系の動きの問題点が、いまの私にはまず何よりも感じられる。
もちろん、アソビがなく流れる動きで結果としてヌケており、しなやかな動きならいいが、言葉でまず、ゆるむことや脱力を強調することは、その言葉のイメージから、気配の出る波やうねりを生みそうで、私としてはおすすめしかねる。
その゛うねり゛をなくそうなくそうとしている私だが、最近、座して手裏剣を直打法によって打ってみて初めて、いままで立って打っているときは気づかなかった僅かなうねりが体に残っていたことに気づいた。そしてこの時、なぜ居合の稽古を座してするのか私なりにわかった気がした。
直打法で間合四間を正座から通すのは、以前ではひどく難しかったろうが、いつの間にか出来るようになっていた。
しかし手に持ったものを飛ばすのに、゛投げ゛に匹敵するほどの゛打ち゛を出すのは、まだまだ先の話だろう。なんといっても、うねりを使う投げによらず、物を飛ばすことは、よほど動きの質が変らなければ困難なことであるから。
以上1日分/掲載日 平成11年5月26日(水)
1999年5月27日(木)
T学園バスケットボール部部長のK先生が、マイケル・ジョーダン選手のビデオを持参され、私の動きとの類似点をいろいろ解説して下さった。たしかに、ジョーダン選手の動きは抜群で、その動きの気配の無さは見事である。私もそれらを参考に、K先生にバスケットボールのルールを確認しながら、巴のターンを応用して、新たな抜き技を開発。K先生に驚かれた。
あと、手を広げてガードを張って来るところに、こちらは前腕の手の甲側をスッと何気なく当ててから、その触れている手の側の半身をザッといっせいに下に沈めることで、ガードを崩す技を実演。これは先日、リングスの高阪選手にも体験していただいた技で、最近一番育っている技なのだが、これは「大変有効」と折り紙がついた。
その他、この日は、同行のH先生が剣道五段で、一時は、その道の専門家になろうかと思われたほどだったので、いくつか竹刀をとって相手をしていただいた。
そのなかでも、最も驚いていただけたのは、鍔競りの状態から、壁突の原理を応用して相手を飛ばすことで、H先生はよろめいて板壁にぶつかるほどで、今まで体験された鍔競りからの私の技のなかで一番有効な技だ、と断言されていた。
これは上半身の沈みと、下半身の前進を合成する技であるが、これから体の割りをさらにすすめて工夫してゆきたい。
以上1日分 /掲載日 平成11年6月7日(月)